ものづくりブログ

ゼロからスタートして何かを作って世に出すまでのことを書くブログです.

実験でものづくりをすると、成功率がグンとあがるよ!という話。

こんにちは。

※この記事はIoTLTアドベントカレンダーの12/6分の記事です。

先日のIoTLTVol. 21でお話した内容を、もう少しだけ詳細に説明した内容です。

目次

  1. メッセージ: あなたのサービスの実現のお手伝いをうちでやらせてください
  2. 実験でものづくりをするとはどういうことか
  3. 実験を使って事業を作るメリット
  4. 今日から試せる実験方法
  5. 実験のポイント
  6. 実験結果
  7. 実験を通してリリースしたサービス「Connectly App」
  8. おわりに




1. メッセージ

リノベるでは、人々の暮らしを豊かにする方法を日々探しています。
自社で住居を提供することはできますが、豊かな暮らしのためには衣食住遊など様々な要素を満たしていく必要があります。
これは一社だけではできません。
リノベるには、皆さんがお持ちのアイデアやサービスがどれだけ優れているか、どうやったらもっとよくなるのかを、安く、早く、簡単に検証する環境とノウハウがあります。
この記事を読んで興味を持っていただけた方は是非リノベるの木村までお声がけください!そしてリノベるのサービスとの連携を是非ご検討ください!


2. 実験でものづくりをするとはどういうことか

ものづくりをする際に、実際に作るのは実験してそのアイデアがイケてるかイケてないか試してからでも遅くないよ、ということです。作っちゃうとお金も時間もかかりますし、うまく行かなかったときにピボット(方向転換)する際の自由度も下がります。でも作る前の実験でそのアイデアがイケてないとわかれば、作らずにすむのでお金もかからないしピボットどころか全く違うアイデアを試すことができます。


3. 実験を使って事業を作るメリット

たくさんメリットはありますが、一番はお金と時間がかからないこと、これに尽きます。
後述の通り、私は70個位実験に失敗して1個の成功を得ましたが、もし70通りのサービスを作っていれば、1個あたり開発費100万円だったとしても7,000万円かかります。でもサービスを作る前にそのサービスがユーザーに受け入れられるかを検証したため、費用を圧倒的に少なく抑えることができました。


4. 明日から試せる実験方法

ここが一番重要なところです。お金と時間がかからない実験ってどんなものなのか。誰でも明日から始められる方法なので、是非読んで頂きたいところです。
例えば、次のような仮説があったとします。
「ペットと暮らす人は、仕事中にペットが吠えたら知りたい。そしてその時の様子を見たい。」
もしこの仮説が正解だとすれば、解決してあげればなんらかの対価を支払ってくれると考えられます。つまりビジネスになります。
ペットが吠えるとスマホに通知が来て、その時の様子が動画で再生されて、ついでに家に置いてあるスピーカー越しにペットに声をかけられたり、場合によってはおもちゃを動かしたりするアプリとデバイスを作ればお金を払ってくれて、しかも月額使用料を支払ってくれるかもしれません。
でもこんなサービスを開発しようと思うとアプリ開発で数百万円、デバイス開発で数千万円、初期生産ロットでまた数百万円かかってしまいます。作ってみてもし売れなかったら大惨事です。

クラウドファンディングをするというのはいきなり作るよりは良い手です。本格的に開発する前にどの程度の人が購入してくれるのかわかるからです。ただ難点なのは、クラウドファンディングをするのにもそこそこの準備が必要で、特に最近はプロトタイプや動画のクオリティも上がってきており、クラウドファンディングをすることそのものにコストがかかる点です。動画制作などを外部にお願いするとなると、合計で数十万円くらいのコストはかかりそうです。プロトタイプも作るとなるとそこに数百万円乗っかりそうですね。

コストのかからない方法として思いつくのはアンケートやインタビューです。でも人間はなかなか自分が必要としているものに気づきません。だから、「こんなサービスがあったら使いますか?」とか「どんなサービスがほしいですか?」と聞いても我々の期待した回答が得られることはほとんどありません。

私がこれから提案する方法はお金や時間もあまりかからず、しかもユーザーが本当に必要としているかどうかを確かめられるものです。ただ、最初に聞いたときは「え、そんなのでいいの?遊んでるみたい。」と思われるかもしれません。
どんな方法かというと、既存のデバイスやサービスを組み合わせて擬似的にそのサービスを提供してしまうというものです。そして使い続けてくれれば必要とされていると判断し、数日で使わなくなってしまうのであれば必要とされていないと判断します。

例えば、そこら辺のネットワークカメラと、音を検知するデバイスと、遠隔操作で喋るロボットを用意して、それらを3個ともペットを飼っているテストユーザーに貸すという方法です。
詳細に使い方をレクチャーし、実際に目の前で操作してもらいます。一連の流れを覚えて迷うことがなくなったら3個のデバイスとアプリを使いながら普通に生活してみてもらって、1週間後こう質問します。
「最後に音検知の通知を聞いたのはいつですか?そして最後にカメラを見たのはいつですか?」
その回答が「さっきです。」とか、「1日前です」とかであればこの機能は必要とされる可能性があります。でも、「いつだったかな、ちょっと待って下さいスマホ見てみます。」だったり、「音検知はしょっちゅう来てます。でも動画は見てません。」だったら多分このサービスは作っても使われません。

なかにはデバイスを用意するまでもなく試せる実験もあります。
「主婦は電気代を高いと思っており、少しでも下げたいと考えている。」
こんな仮説だったら、デバイスを用意するまでもありません。ただこう聞けばいいだけです。
「先月の電気代はいくらでしたか?」
これが答えられなければ、電気代を安くするというサービスは必要とされていないということです。
実際に金額に関心のあるもの、例えば乗っている車の購入金額、住んでいるアパートの家賃、自分の月給を答えられない人はあまりいません。


5. 実験のポイント

実験にはいくつかのコツがあります。その中でも重要なものを3個挙げます。

他社製品で実験しても構わない

なんでも自社で用意する必要はありません。競合他社が似たような製品をすでにリリースしていれば、それを購入して使うべきです。かのAppleだってiPhoneを出す前に3つの機能を実験しています。ジョブズのプレゼンを見た人なら分かる通り、携帯電話、モバイルインターネット、音楽プレーヤーです。そのうち音楽プレーヤー(iPod)以外は他社製品で実験しています。携帯電話はノキアなどの製品ですし、モバイルインターネットはある島国の会社が提供していたi-modeというサービスです。

質問はオープンに

上記の例で言うと、「電気代が下がるとうれしいですか?」とか、「電気代が下がるなら契約する会社を変更しますか?」という質問はNGです。ほとんどの人がYESと答えます。でも実際はその答えは真実でないことがほとんどです。このことは実際にユーザーにアンケートやインタビューを行ったことがある人なら感覚で知っていると思います。
ではどのような質問をすべきかというと、オープンクエスチョンを使うべきです。
オープンクエスチョンとは、YES/NOで答えられる質問ではなく、例えば5W1Hで聞くような、相手が好きなように答えられる質問です。
「家計で気になるのはどんな出費ですか?」
などです。
これを使うとより相手の正直な気持ちを引き出せますし、答えるときに相手が考えるので、より深層心理に近い回答を絞り出してもらえる可能性が高まります。

質問はユーザーの思考より行動にフォーカスする

オープンクエスチョンをすることでユーザーの正直な回答を引き出す確率はかなり上がりますが、より真実に近づくためにはユーザーの思考ではなく行動にフォーカスする必要があります。
「どう思いますか?」より「どう行動しましたか?」のほうがより良い質問という意味です。
それは何故かと言うと、どう思いますか?という質問に対しては悪気なく本心と違うことを答えてしまう可能性があるのに対し、どう行動しましたか?という質問に対しては実際に起こった事実を答えるので間違った回答をすることはまず起こり得ないからです(悪意があれば別です)。
「運動してたっぷり汗をかいたあとは何を飲みたいと思いますか?」と聞くと「ビール」と答えるかもしれませんが、「運動したあとどんな飲み物を買いましたか?」と聞くと「ポカリ」と答えるかもしれません。この場合より真実に近いのは「運動後はポカリを飲みたいと思っている」ということです。


6. 実験結果

さて、私は2016年の4月から9月の間にざっくりと70個くらいの仮説について実験を行いました。10月からこの記事を書いている11月末時点までの間にさらに30くらいの実験を行っていますが、ここでは9月までの70個の実験の結果からのみ抜粋します。

ユーザーニーズが無いと判断した仮説
  • 家電の遠隔操作は2日で飽きる
  • スマホで操作できるデバイスが増えると超絶不便
  • ペット見守りカメラは1日で飽きる
  • 消耗品の安値レコメンド+簡単発注は利用されない
  • 省エネ、電気代節約は興味を持たれない
  • 電力消費を見える化しても1日で飽きる
  • セキュリティカメラやセンサーに価値を感じていない(安全が無料)
ユーザーニーズがあると判断した仮説
  • でかける時刻や天気などを朝自動的に音声でお知らせしてくれる機能

以上

一般的にニーズがあるとされている住宅向けIoTデバイスが持つ機能がことごとくユーザーから受け入れられず、正直「スマートハウスってニーズ無いんじゃ…?」と思うことも何度かありました。それくらい常識ではニーズが有ると言われているものがユーザーからは2日くらいで飽きられました。

でもある時ユカイ工学さんのBOCCOを使って、朝出かける時刻や、天気予報を喋らせたりしたところ、毎日使ってくれて、しかもその方の奥さんやお子さんまで使ってくれるということが起こりました。もっというとちょっとした不具合で動かなくなったときに奥さんからクレームが出て、必要とされていることが証明されました。


7. 実験を通してリリースしたサービス「Connectly App」

実験結果をもとに、なるべく誰でも使えるようなUIで、BOCCOに情報を喋らせるアプリを開発しました。
Connectly Appというアプリです。(CNETさんの記事)
https://itunes.apple.com/de/app/connectly-app/id1159235047?mt=8&at=10l8JW&ct=hatenablog

UIも基本的に実験をもとに作っており、手書きで画面を書いてみて色んな人に触ってもらって迷わず押すべきボタンを押せるか検証したり、Prottというサービスを使って画面遷移で迷わないかどうか試したり。ひたすら社内の人や偶然食事行った人に触ってもらって質問したり後ろから使っている様子を動画で撮ったりする日々でした。

結果、スマホユーザーのほとんどが使っている、LINEなどのチャット画面と、アラームアプリのような画面に落ち着きました。

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BOCCOがあれば無料で使えるので、是非使ってみてください。朝の準備のスムーズさが結構変わります。また、今後も機能をどんどん追加予定です。機能追加後もチャットでアプリが丁寧に設定方法を教えてくれるので簡単に設定できると思います。


8. 終わりに

実験を使って事業を作るのは、お金も時間も節約できるので自分にとってだけでなく、自分が所属する組織にとっても計り知れないメリットのある方法です。

でもあまりにも突飛な発想なので、最初はなかなか受け入れられないと思います。
そんななかリノベるという会社は非常に理解があり、好き勝手やらせてくれました。めちゃくちゃ感謝してます。
だからきっとそんなにうまくいったのは比較的理解のある会社だったからでしょうと思われるかもしれません。
もちろん否定しませんが、うまくいくにはどうすればよいか、というコツもかなりつかめたと思います。なぜなら僕の上司がそのあたりがすごくうまかったからです。その上司のおかげでここまでうまく行ったと言っても過言ではありません。
多分どんな会社でもこの実験を使う方法は使えると思いますし、使うべきです。
どうやればよいのかわからないという方、是非ご相談ください。きっとお役に立てると思います。
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