ものづくりブログ

ゼロからスタートして何かを作って世に出すまでのことを書くブログです.

ビットコインのことはこれだけ読んでればとりあえずOK、という記事

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こんにちは。

もう最近は一時期ほどその名を聞かなくなったビットコインですが、未だにちょこちょことWEB上のニュースなどでは見かけたりします。将来主流となるのか、それとも廃れていくのかは誰にもわかりませんが、この仕組を理解すると、現行の国家が発行する通貨の弱点の多くを克服している画期的なものであることがわかりますので、是非この機会に上辺だけでも理解していただき、皆さんが明日からドヤ顔する役に立てばこの記事を書いたかいがあるというものです。


さて、ビットコインはその知名度の割に中身が多くの人に理解されていない言葉だと思います。私はそれが、「管理者がいない」とか、「高性能なコンピュータで常に採掘されている」とかそういった断片的な情報が理解を妨げているためだと感じています。そこで、詳細な仕組みは別として、概要を理解するためにはどのような説明をするべきなのか考えてみました。そして、2つのキーワードさえ押さえておけば理解できるということに気が付きました。

その2つのキーワードが、”公開鍵暗号”と”ブロックチェーン”です。

逆に言うとこの2つを理解せずにビットコインを理解することは不可能なので、この2つについては少し文章の量を割いて説明したいと思います。ちなみにこれらはビットコインだけでなく現代社会の様々な場面で活用されている、または活用されうる非常に重要な技術なので、教養として覚えておいても損はありません。


キーワード1. 公開鍵暗号

公開鍵暗号というのは、暗号の1種です。
対義語は秘密鍵暗号です。

はじめに昔ながらの暗号を見てみましょう。例えば以下の様な暗号化された文字列を解読してみます。

KCOCUVWFGPV

これをアルファベット順に2文字ずつ前に戻すと、以下のようになります。

IAMASTUDENT

すなわち、

I am a student.

です。ちなみに暗号文ではスペースが非常に大きなヒントになるので、スペースを除いてやり取りすることがほとんどです。

このとき、x文字だけアルファベット順にずらすというのがこの暗号の方式と呼ばれ、特にこの方式の暗号はシーザー暗号と呼ばれます。昔カエサル(シーザー)が利用していたのがその由来です。
そして、何文字ずらすかを表す”2”というのが鍵と呼ばれます。

もう少し複雑な暗号を見てみましょう。

ACTOGEMFLBH

これを以下のように”SCHOOL”という鍵を当て、図1のような方陣で一番上の行が鍵の文字の列で暗号文の文字がある行の一番左の文字を書き出していきます。例えば鍵の1文字目Sが1番上の行にある列で、暗号文の1文字目Aがある行の一番左の文字を探すとIが出てきます。

S C H O O L S C H O O
A C T O G E M F L B H
I


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図1 ヴィジュネル方陣

このように暗号文を解いていくと、以下のような文字列が出てきます。

IAMASTUDENT

この暗号方式は考案者の名前からヴィジュネル暗号と呼ばれ、この時の鍵は”SCHOOL”です。

今挙げた2例では、”2”や”SCHOOL”という鍵が暗号化の鍵となり、また暗号を解くための鍵にもなっています。この鍵は暗号をやりとりする当事者間にのみ共有され、これが第3者の漏れれば簡単に解読されてしまうということがわかります。このように、暗号化の鍵を秘密にすることで成立する暗号を、秘密鍵暗号と呼びます。


一方で、鍵を公開してしまう暗号を公開鍵暗号と言います。鍵を公開してしまっては誰でもその鍵を使えてしまうのに何が暗号なんだ?と思われるかもしれませんね。
公開鍵暗号が暗号として成立する理由は、暗号化するための鍵と暗号を解読するための鍵が別であり、公開するのは暗号化する鍵のみであるということです。解読するための鍵は自分だけの秘密にしておくので、自分以外に暗号が解読される心配はありません。
なぜこんなことをする必要があるの?と思われるかもしれませんが、これはセキュリティの観点から、非常に大きな革命的な進歩だったのです。

実は秘密鍵暗号の重大な欠点として、鍵の受け渡しが必要であることが挙げられます。暗号文の送信者と受信者は常に今どの鍵が使われているかを共有しておく必要があります。また、1個の鍵を何日も使っていれば、誰かに解読されてしまう可能性が高くなるため、通常は毎日のように鍵を変えることが求められます。つまり定期的に鍵を受け渡しする必要があるのですが、そのタイミングがスパイにとっては情報を盗む絶好のチャンスだったのです。一方で公開鍵暗号では暗号化の鍵は誰でも見られるように公開されていますし、復号化の鍵は一切誰にも渡す必要が無いので、解読用の鍵の漏洩リスクが圧倒的に下がります。

ちなみにどのような仕組みで公開鍵暗号方式で暗号化/復号化がなされるのかということに関しては、理解のためにそこそこ数学的な知識が必要になるのでここでは割愛します。興味のある方はこの記事末尾の参考文献の[1]や[2]なんかを参照してみてください。
簡単に触れておくと、コンピュータが非常に苦手とする演算である、素因数分解というものを利用したものが知られています。例えば22という数字を素因数分解すると2と11になります。すなわちこれ以上割り切れないまで割ることを素因数分解というのです。2と11から22という数字は掛け算をするだけですぐに出てきますが、22から2と11を出す素因数分解をコンピュータは非常に苦手としています。これを利用して、2と11を復号化のための秘密鍵として自分で持っておいて、22を暗号化鍵として公開してしまうのです。もちろんこのくらいのケタであればコンピュータも簡単に素因数分解ができますが、例えば何万ケタ×何万ケタのような数字の素因数分解ともなるとかなりの時間を要します。ちなみに現代のインターネットなどで利用されている暗号を最新のスーパーコンピュータで解読しようとすると、宇宙の寿命よりも長い時間がかかるそうです。ほぼほぼ解けないと思って間違い無さそうですよね。


さて、ここまでそこそこの文量を割いて公開鍵暗号について説明してきました。これがビットコインにどのように関係するのでしょうか。
ビットコインはその名が示すとおり、お金です。ただもう一つ意味があって、そのお金を取引するための決済システムをも指しています。決済システムというのは、日本円で例えるならAさんの銀行口座からBさんの銀行口座に振り込むといったお金のやりとりを行うための仕組みのことですね。
ビットコインにも口座があります。その口座には番号が振られているのですが、普通の銀行口座と違う点は自分用の番号と他人に公開する用の番号がある点です。自分の口座から誰かに振り込む時は自分用の番号が必要です。そして、自分の口座に誰かから振り込んでもらう時は他人に公開する用の番号を使います。
この自分専用の番号と他人に公開する用の番号って何かに似ていますよね?そうです。ビットコインはここで公開鍵暗号の仕組みを使っているのです。かつては機密情報のやり取りのために発明された暗号が、まさか決済システムになってしまうなんて、感動すら覚えませんか?

ところで、公開鍵暗号の中には特別な性質を持ったものがあります。それは、復号化用の鍵で暗号化すると、その暗号では暗号化用の鍵が復号化用の鍵になるという性質です(図2)。

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図2 公開鍵と秘密鍵の関係

この性質を利用したのが電子署名と言われる技術です。もし私が、自分で作成した公開鍵暗号の復号化用の鍵(自分用の鍵)で自分の文書を暗号化して公開すると、それを解読するにはそれと対になっている、公開されている暗号化用の鍵が必要ということになります。すなわち、その暗号化鍵で解読することができれば、その文書が私によって公開されたものであるという証拠になるのです。そしてその証拠は公開鍵によって確かめられるので、誰でもが自分で確かめることが出来るのです。その点は本人確認のために筆跡鑑定などが必要な普通の署名よりも優れた点です。

なぜこの話をしたのかというと、この性質はビットコインになくてはならないものだからです。
先ほど私は自分の口座から他人に振り込む時は自分用の番号を使用すると書きました。その時、受け取る側からするとそれが本当にその人から送金されたものかどうかを見極める術が必要です。それが、この復号化鍵で暗号化した文字列を復号化するのに暗号化鍵が必要、という性質によってもたらされるのです。
実際に取引の例を見てみましょう。

1. AさんがBのさんに1BTC(ビットコイン)を送金しようとしています。
2. その情報をAさんは自分用の番号で送金情報を暗号化し、Bさんの公開用番号宛に振込みました。
3. BさんはAさんから送られてきた送金情報をAさんの公開用番号で復号化してみたところ、無事復号化できたので、これはたしかにAさんからの送金だと確認できました。
4. Aさんの口座から1BTCが減り、Bさんの口座に1BTCが増えました。

このように、ビットコイン公開鍵暗号の暗号送受信という面と、電子署名という面の双方を利用した仕組みなのです。

これでビットコイン公開鍵暗号技術をどのように使用しているかということはほとんど説明ができたのですが、あと1点だけ説明する必要があります。それはどのように口座を作るかということです。普通の銀行であれば口座の管理者である銀行に申し込んで、口座を作ってもらい、口座番号が発行されます。でもビットコインの場合、誰でも好きなときに勝手に口座を作って良いのです。自分用の口座番号を一定のルールにしたがって作ってしまえば、それに伴い公開用の口座番号は決まりますので、それを世の中に公開するだけです。あとはその公開用口座番号にビットコインが振り込まれれば、あとはその口座から他の口座に振り込むことができるのは自分用の番号を知っているあなただけなので、実質的に勝手に作った口座が世の中に認められた公式の口座という扱いになるのです。このことが、ビットコインには中央管理者が存在しないと言われる理由の一つです。


キーワード2. ブロックチェーン

これまでにビットコインでどのように口座が作成され、口座間のビットコインのやり取りがなされるかを、公開鍵暗号というキーワードを使って説明してきました。

それでは、どの口座にいくら入っているか、というのはどのように管理されているのでしょうか?

例によって普通の銀行の例で考えてみましょう。
銀行の口座にいくら入っているかは、言うまでもなく銀行のシステムで管理されています。
例えばA銀行の口座を持っていたとして、その口座の残高を管理しているのはA銀行ですから、別のB銀行はその残高を知りたい場合は、A銀行に問い合わせる必要があります。
口座の名義人がその金額を知りたいときは、ATMで残高確認をしたり、通帳に記帳したり、オンラインバンキングサービスを利用してPCやスマホから確認したりします。

ではビットコインの場合はどうなのかを見てみましょう。
先に書いたとおり、ビットコインの口座はルールに則ってさえいれば誰でも勝手に作って良いのでした。
そして、その口座に送金するときは、公開鍵暗号の仕組みを使って公開用の口座番号に振り込み、逆にその口座から別の口座に振り込む場合は、自分用の秘密の口座番号を使って振り込むのでした。
ではその振り込んだという記録はどこにするのでしょうか?
実はこれが非常に重要なポイントです。
ビットコインでは、こういった取引履歴を、インターネット上の複数の端末が全員で持つのです。
すなわち、ビットコインの歴史が始まった2009年から今までの全ての取引履歴を誰でも閲覧/所有することが可能ということです。
そのようにしてどの口座からどの口座へ振り込みが行われたかという全ての履歴が明らかになることで、どの口座にいくらビットコインが入っているかが明らかになるのです。
単一の管理者が口座の残高の管理を行う従来の仕組みに比べて、圧倒的に改ざんが難しいことがわかると思います。
例えばこの履歴を持つ端末が世界中に数千万あれば、その中の数個の端末のデータを改ざんしたところですぐに不正がバレてしまうためです。

では、取引も口座作成と同じように勝手に行って良いのかといえばそんなことはありません。
例えば残高を超えるような送金はできないような仕組みが必要です。
そこで、ビットコインでは取引の承認を行うことになっています。では、誰がいつ承認を行うのか。この取引承認の権利の争奪戦が、ビットコインの非常に面白いポイントのひとつです。
ビットコインでは10分に一度この取引承認の機会が訪れるようになっています。
その度に、取引承認を行いたい人はあるクイズ大会に参加します。
クイズの内容は、複雑な暗号を解読するようなもので、人間の力ではとても不可能で、高性能なコンピュータが演算しています。
これに最初に正解したコンピュータが、その時の取引の承認を行う権限を持ちます。
承認が行われると、規定のビットコインが承認者に与えられます。
これを俗に”採掘”と呼んでいます。当然ですが、本当に鉱山で掘り出すようなことはしません。この暗号解読クイズに挑戦し、最初に回答することでビットコインを得ることを”採掘”と呼ぶのです。

ちなみに、10分に1回なのに回答が早い者勝ちってどういうことなの?と思われたかもしれません。当然ですよね。1分で回答されたり、回答に20分かかったりすればこの10分に1度というリズムが崩れてしまいますからね。
実は10分というのは決められている制限時間などではなく、その時に参加しているコンピュータの数とそれらの演算能力で大体10分位で解読されるであろう問題が出題されるような仕組みになっているのです。
つまり、参加者数が多くなればなるほど、また参加する端末の性能が上がれば上がるほど、問題が難しくなっていくのです。この高難度化が進めば、ある時コンピュータを動かすための電気代が、得られるビットコインによる収益を上回ることになります。すでに現在ではその状態になってきており、先進国より電気代の安い途上国のほうが採掘が盛んに行われています。現在一番参加しているコンピュータ数が多いのは中国です。

さて、このようにおおよそ10分に1回のクイズ大会の度に取引の承認が行われることがわかりました。このようにビットコインの世界では10分毎にあらたに通帳のページが増えていくように取引履歴が増えていきます。この1ページにあたるひとかたまりを、ブロックと呼んでいます。このように、情報をブロックという単位で管理し、その連続データを複数の参加者で所有し、誤りや不正を監視しあうシステムを、ブロックチェーンと呼んでいるのです。


まとめ

いかがでしたでしょうか。公開鍵暗号ブロックチェーンというキーワードを使ってビットコインについて説明してきました。
他にも送金手数料はないの?あるとすれば何に使われているの?とか、そもそもビットコインを採掘したりブロックを記録するシステムは誰が作ってるの?とか、取引承認が全く同時に行われた場合どうなるの?とか、説明できていないことはたくさんあります。でもビットコインが大体どういうものなのかはおわかりいただけたのではないでしょうか。
この仕組みを理解すると、ビットコインは国がどれだけ規制しようとしても口座の凍結や資産の差し押さえなどができないことや、誰がどの口座を持っているかを調べる方法も限られることがわかります。
このことは危険と考えるか、安全と考えるか、また社会にとって良いことと考えるか悪いことと考えるか。それは考える人の立場や信条にもよることです。世の中では賛否両論、様々な意見が飛び交っていますが、それらに流されるのではなく、自分でちゃんと考えたいものです。



参考文献
[1]暗号解読
[2]猿にもわかるRSA暗号(http://www.maitou.gr.jp/rsa/)
[3]誰も教えてくれないけれど、これを読めば分かるビットコインの仕組みと可能性(http://jp.techcrunch.com/2015/03/31/bitcoin-essay/)

趣味と実益を兼ねてスマートハウス実験室を作ったお話

こんにちは。

かなり久々の記事更新ですが、その理由はこの数ヶ月全然電子工作やプログラミングをやっていなかったからです。
なぜかというと、転職し、別のものを作っていたからです。

それがこちら。

www.connectly.net

何かというと、IoTデバイスを詰め込んだ家、のような空間です。
なかなか自分で買うと高いHueだったり、COCOROBOだったりのAPIを好きに叩いて良いよ、ということにしています。

ここに来て色々な製品を使ってみてすごく面白ければ買えばいいし、思ったほど面白く無いなと思ったら買わなければ良いので、なかなかお金のかかるハードウェアエンジニア達にとってはそれなりに便利に使ってもらえるのではないかなと思っています。

なんでこの場所を作ったかというと、企業が作るスマートハウスと、個人が考えているスマートハウスにギャップを感じたからです。正直世界中どの企業を見回してもわくわくするスマートハウスの構想が出てきていません。セキュリティがどうだとか、データの量が膨大になるからデータセンターを大量に作れねばとか、たしかに重要なんですけど、肝心のアプリケーションが出てきません。

一方で個人の活動を見ていると、家を音ゲーのゲーム機にしてしまったり自動化を実現してしまったり、色んな面白そうな事例が出てきています。

でも個人で作るとやはり使える予算も少ないし、製品にするためには超えるべきハードルが多数あります。自宅を世間に公開するわけにも行かないので、せっかくの作品も世に広まることが少ないという課題も感じています。

そこで、それらのハードルを取っ払っていこうと考えて作ったのがこのConnectly Lab.です。

具体的には以下のようなハードルを取り去ることに貢献できると考えています。

  • 作品を見てもらうコストが減る(for個人)
  • アプリケーション開発のための機器購入コストが減る(for個人)
  • 他者の作品とその技術を調べるコストが減る(for個人)
  • 作品を製品に変えることができるメーカーとのマッチングコストが減る(for個人)
  • 逆に製品化する実力はある企業がアイデア探しできる(for企業)
  • 面白いアプリケーションに使ってもらえる製品類(Netatmoとか)の宣伝コストが減る(for企業)
  • 部屋のデザインをオシャレに作っているので、デザイン重視層にもアピールできる(for個人、企業)
  • ものづくりを促進するようなイベント開催コストが減る(場所を無料で解放)(主にfor企業)
  • 普段から見学者がいるので、アンケートなどで市場の声が聞ける(for個人、企業)

こんな感じで色んな方々にメリットを提供して、その結果としてこの世にスマートハウスというものが実現すれば、会社や社会の利益にもなるかなぁと思っています。
是非これをご覧になった皆さん遊びに来てください。
遠隔操作できるロボットもあるので、遠方からのオンライン見学も大歓迎です。


お待ちしております!

テスラを試乗してきたけど、未来のクルマの姿を垣間見た

こんにちは。

先日、テスラモーターのモデルSを試乗してきました。私が乗った車種の基本スペックは以下のとおりです。

  • 5人乗り
  • リアにモーターを積んでいて後輪駆動。いわゆるRR。ポルシェと一緒。
  • 最大380馬力
  • 最高速度215kmと250km(クラスにより異なる)
  • 電源はスマホとかと同じリチウムイオン電池で、フル充電で走行できる距離は500km以上(らしい)。

Model S | Tesla



前職の有給消化で比較的自由な毎日を送っていたので、次の仕事にも若干活かせそうだし試乗に行ってみたところ、思いの外感動したので気づいたところなどをまとめました。



まず外観から。

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ヘッドライトはLEDでおしゃれな感じです。白色の光で夜道も見やすそう。黄色とかオレンジとかのほうが雨の日見やすいのですが、白のほうがかっこいいですよね。

あと実用上あまり関係ないのですが、ドアノブが面白かったです。通常は何も出っ張りが無いので手を引っ掛けられずドアが開けられないのですが、ノブを押し込むとゆっくりと出てきて、手で引けるようになります。走行開始すると自動的にまた引っ込みます。これがただオシャレのためだけの機能なのか、他の意味があるのかは聞きそびれました。高速走行時は空気抵抗が減るんですかね?



次に運転席からのビューです。メーター部分と、エアコンとかオーディオとかの操作画面があるところがどちらも液晶パネルになっています。ここがテスラの車の一番のポイントだと思います。なぜなら全て液晶にしたおかげで、表示する内容や機能をソフトウェア・アップデートにより変えられるからです。

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円形のメーターの左半分が速さ、右半分がエネルギー消費を表しています。速さに関しては通常のガソリン車と同じく何km/hで走っているかを表示するものなので特に説明は不要だと思いますが、エネルギー消費のメーターが独特だったので少しご説明します。

要はガソリン車のエコ・ドライブ通知みたいなのと同じ発想なのですが、特徴的なのは消費だけでなく生産があるところです。テスラの車は電気自動車なので、燃料ではなく電池にためた電力で走っています。つまり、モーターの回転を使って発電することができます。あとで詳しく説明しますが、テスラの車の特徴はブレーキのかけ方にもあります。ガソリン車ではスピードを落とすときは足をアクセルからブレーキに素早く踏み変えて行いますが、テスラではほとんど踏み変える必要がありません。ガソリン車でいうところのエンジンブレーキがかなり強力なので、それで結構スピードを落とせてしまいます。このエンジンブレーキが強いのは、その時に発電しているからです。ブレーキペダルを踏むと単にブレーキパッドを削って止まるだけなので運動エネルギーを熱エネルギーに変えているだけですが、アクセルを離すことで止まればそのエネルギーの一部が電池に還元されるわけです。災害用グッズで手でくるくるレバーを回すと明かりが点く懐中電灯がありますが、あれと同じ原理です。あれを回すと結構重いですよね?あれは中にモーターが入っていて、それを回す力を電気エネルギーに変換しているので重いのです。
どれくらいエネルギーを使ってどのくらいエネルギーを生産したかは、時系列でグラフにしてくれるので、自分のエコドライブ具合を後から見ることも可能です。
自動車が走っているというのはそれだけでエネルギーを持っているので、そのスピードを落とすのはエネルギーを失わせているということです。普通のブレーキはそれを熱に変えてしまうのに対し、テスラのこのブレーキは電気エネルギーに変えてくれるので、とてもエコだと言えます。



次はメインパネルとでも言うべき液晶ディスプレイです。

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ここで車の操縦以外のほとんどの操作ができます。音楽の再生、ナビの操作、エアコンのコントロールはもちろんですが、前述のブレーキによる発電をするかしないかや、ガソリン車の特にオートマ車ではおなじみのクリープ現象(を再現した機能)のON/OFFなどを切り替えたりできます。また、エアサスペンションが入っているので、車高を変えたりもできます。いるかどうかわからないけどインターネットもできたりします。今後もソフトウェア・アップデートにより次々に機能が追加されていく予定とのこと。もう車というよりほとんどPCですね。そのうちここに広告が出る代わりに車体価格安くするとかも可能性ありますよね。デートの時はいくらか払って広告OFFにするとか。笑



さて、ここでいよいよ試走に入ります。モーターなのでブレーキを離しても進まないはずなのに、ガソリン車に慣れた人のためにクリープ現象が再現されています*1。これもソフトウェア・アップデートで追加された機能だそうです。ただ僕がこの車のオーナーならこの機能はOFFにすると思います。後で説明しますが、アクセルだけでコントロールするのが思いの外素晴らしいUXだったからです。

*1 あとで調べたところ、ガソリン者のオートマ車クリープ現象はとっくに無くせるのだけど、人間がこれに慣れてしまっているからソフトウェア的に再現しているようです。



車体が大きいので若干緊張しながら公道に出ます。左折のウインカーを出そうとしたらシフトノブで、間違えてRに入れてしまって焦りました。外国車なのでウインカーはハンドルの左についてるんですね。シフトノブは左手でガッツリ動かす感じではなく、日本車で言うウインカーのスティック(?)の位置についていて、指で一番下まで下げるとドライブに入って、一番上まで上げるとバックに入るというものです。先端のボタンを押すとサイドブレーキ兼パーキングになります。



個人的に一番よかったのはアクセルの使い方でした。ここまでもちょいちょい触れましたが、走るとき踏み込んで、止まるときはゆっくりアクセルを離してきて、最後5km/hくらいまでの速さになったらブレーキを踏むという使い方でした。従来のガソリン車で止まるときはすぐにアクセルをオフにしてブレーキを踏むというペダルコントロールが必要でしたが、テスラの車ではほとんどアクセルのコントロールだけで用が足りてしまいます。せっかくのブレンボのブレーキ涙目www



試乗の途中、広めの道で前が開けたので結構強めにアクセルを踏んでみたのですが、ガソリン車では考えられない加速でした。思い切りシートに張り付く感覚。これは高速道路で追い越すときなどにかなり良さそうです。追い越すときはスピード上げてさっと追い越したほうが安全ですからね。そしてスピードを落とすときはアクセルをゆっくり離してくれば良いので、ブレーキはほんとにほとんど使いません。



ギアは何段変速かな?と思ったら、ギアは無いとのこと。CVTみたいな無段階変速とかではなく、変速そのものがないそうです。ガソリンとかディーゼルエンジンだとせいぜい数千回転くらいしか回せないのでギアで切り替える必要がありますが、モーターは4万回転とかまで回せるのでギアで切り替える必要が無いためとのこと。F1でも1万数千回転とかなのに4万回転は驚異的ですね。
MT車無いんですかとか聞きそうだった自分の固定観念が打ちのめされました。



また、現行で一番安い(と言っても高級)モデルは4WDらしいのですが、原動機1個でプロペラシャフトを通じて4輪を駆動させるという従来の仕組みではなく、モーターを2個積んでそれぞれ前輪と後輪を動かす仕組みとのことで、両者をアクティブに制御できるそうです。4WDだとシャフト通す分車内狭くなるじゃんと思ってましたが、これも固定観念でした。でもインホイールモーターみたいに1車輪あたり1モーターではなく、前輪で1個、後輪で1個の合計2個とのことです。左右の作動装置はディファレンシャルギア(LSDだったかも)とのことでした。これは従来の自動車と同じですね。


最後車庫入れは私はやりませんでしたが、バックの時はメインディスプレイに大きく後方の映像が映し出されます。この機能自体は通常のカーナビなどでも搭載されていますが、あの大画面で出ると結構見やすさが際立つなーと思いました。



最後いくつか経済的なところを教えてもらったので羅列します。

  • 税金はかなり優遇されていて、自動車取得税と重量税が免税
  • 車両価格はオプション何も付けずに937万円
  • サンルーフが18万円くらいでつくので、多分オプションの価格は良心的
  • 車両価格の大部分はバッテリー代。panasonic製のリチウムイオン電池。みんなevoltaたくさん買って価格を下げようw
  • 車検は意外と安いらしい。部品点数がガソリン車より少なく、オイル漏れなどもないためメンテナンスが楽なため、とのこと
  • 家庭でのフル充電(半分だったかな?)で1,000円程度の電気代。どちらにしてもそれで250kmから500km走れるなら高くない
  • ただし家庭の100Vではかなり充電が遅いので、200Vの工事を推奨しているとのこと。工事代10万円程度

結論としては、かなり欲しいと思いました。ただ東京で車乗らないんですよね。。。