Rovioのリストラに思うこと
こんにちは。
当初はこのブログでいろんなWEBサービスとかプロダクトとか使ってその感想などを書いていこうと思ったのですが、ちょっと思うことがあったのでニュースを取り上げてみました。
2個目の記事で早速ブレるとは。。。
Rovioがフィンランド国内の支社も閉鎖 同国内のスタッフを本社に集約
http://www.gamebusiness.jp/article.php?id=10395
Rovioは「Angry Bird」で有名なフィンランドの会社で、あの赤い鳥のキャラクターのぬいぐるみをゲームセンターなどでもよく見かけました。
ただ改めて考えると、Rovioの他のプロダクトが思い浮かびません。
調べてみると、他にもいくつかタイトルを出している模様。
でもやはり大半はAngry Birdやその関連コンテンツで、数えてみたところ、全17タイトルのうち、11タイトルはAngry Bird関連でした。
おそらく収益もほとんどがAngry Bird関連で、しかも下記のニュースによると昨年などはグッズの売り上げが全体の47%に及ぶとの情報もあり、全社のほとんどがAngry Bird関連の売上なのでしょう。
2013年のRovio(Angry Birds)、売り上げは横ばいで利益は半分ほどに減少
http://jp.techcrunch.com/2014/04/30/20140428angry-birds-rovio-revenues/
Rovioが経営不振なのかどうかは「リストラ(というかレイオフ)した。」という事実からのみでは断定できませんが、
仮にそうなのだとすればRovioはどうすればこの事態を避けられたのでしょうか。
一発の当たりに頼らない
Rovioは第2、第3のAngry Birdを生み出すことに注力するのではなく、すでに当たったAngry Birdに頼ってその続編を10作もリリースしたり、グッズを販売したりすることに注力しました。
ぬいぐるみを安く作ってくれる工場を探したり、3Dデザインする人を雇ったり、コピー品対策をするための監視を行ったりと色々とやることが増えたはずです。
その結果Angry Birdはかなりの額の売上とキャッシュをRovioにもたらしたでしょう。
でもAngry Birdは現在までのところ、残念ながらミッキーマウスになってはいません。
やはりRovioは会社を継続的に成長させるために、第2第3のAngry Bird(続編という意味ではない)を作る努力をもっとするべきだったのでしょう。
では具体的にどのようなことをすればよかったのでしょうか。
例えば同じくフィンランドに、Supercellという会社があります。
ここでは、ゲーム制作に様々なルールを設けています。
チームの人数、メンバーの役割、全員でゲーム内容に口出しする、βリリースの際のKPIを明確に定めてブレさせない、KPIで基準を満たさなければサンクコストを捨てて開発中止する、ゲーム内課金でしか手に入らないアイテムは作らない、といった仕組みやポリシーは、ヒット作を連続でリリースするのに少なからず貢献しているはずです[1]。
メディアに公開しているだけでこれだけの要素があるのです。おそらく外に出せないようなルールや仕組みがたくさん仕込まれているのでしょう。
また別の例で、candy crushで有名なイギリスのKingでは、10年で180以上のゲームをリリースしています。
年間18タイトルは他のゲームメーカと比較してもかなり多い数字です。
ある程度少人数のチームで並行して開発するなど、ゲームを量産するような仕組みがあるのでしょう。
ポリシーとして「Bite size brilliance、一口大の輝き」、つまりすごく短時間でも楽しめるゲームというものを掲げています。
SuperCellとは対照的に、数打ちゃ当たる方式ですが、製品にコンセプトを持っている点は両社とも共通しています。
このようにゲーム業界で成功している企業を見てみると、継続的に新しいものをリリースできる仕組みや哲学を持っているということが読み取れそうです。
でも、中には新サービスを出さずに継続的に利益を上げ続けている会社もたくさんあります。
そういった会社のモデルは真似することができないのでしょうか。
ゲームはプラットフォームにはなりえない
継続的に新しいサービスをリリースしているわけではないのに成功している会社の例として、facebook、Apple、LINE、Googleなどが挙げられます。
これらの会社も新サービスをリリースしてはいますが、当初のサービスが今でも収益元として機能し続けています。
先に結論を言ってしまうと、ゲームメーカが同じように当初のサービスのみで収益を上げ続けることはできないと考えています。
なぜなら、ゲームはプラットフォームにはなりえないからです。
上記で例として挙げたような企業はいずれもプラットフォームとして機能しています。
facebookもそう、AppleのiOSもそう、LINEもそう、Googleの検索やMAPもそうです。
ユーザはこれらのプラットフォーム上で友達とコミュニケーションを取ったり、写真を共有したり、ゲームをしたり、仕事の連絡をしたり、情報を調べたりします。
ポイントはここです。ユーザはプラットフォームを使うことを目的にしているのではなく、手段にしているのです。
ユーザがプラットフォームを使う目的はその都度違います。
例えば私の場合、facebookは以前は海外の友達と連絡を取る手段でしたが、それが徐々に日本の友達にも広がり、今ではほとんど仕事の連絡です。
Googleの検索は調べ物という意味では変わりませんが、5年前と今では調べている内容は大きく異なります。
ちょうど先日テレビを見ていた時に、「今でしょ!」で有名な林先生が、「自己目的的行為」のお話をされていました。
それそのものが目的の行為のことを指す言葉です。
例を挙げると、受験勉強は大学合格のための手段ですが、遊びは何かの目標を達成するための手段ではなく、それそのものが目的です。
今回のお話に当てはめるなら、ゲームは自己目的的ですが、プラットフォームは手段です。
長く残っているプラットフォームは手段として生き続けていますが、その目的はずっと変わってきているのです。
このように、ユーザの目的は時代と共に、またその人の成長と共に変化していくものなのですが、手段は比較的変わりません。
私の場合、成長と共に見るテレビ番組がおかあさんといっしょからワールドビジネスサテライトまで変化しましたが、それらを見る手段はずっとテレビです(ブラウン管か液晶かの違いはありますが)。
その意味では、ゲームに限らず自己目的的行為を商材としてビジネスを営んでいる限り、新しいプロダクトはずっと生み出し続けなくてはいけないのです。
つまり映画会社も出版社もテレビ番組制作会社も、一発当てただけではだめで、それを量産できる仕組みを作る必要があるわけです。
今本業や趣味などで、いくつか戦略を考えているのですが、一つのプロダクトに注力するのか、継続的に優れたプロダクトを生み出す仕組みに注力するのかの判断は、そのプロダクトが自己目的的なのか、それとも何かの手段として有効なのかを考えてみると見えてくるのだと思いました。
参考文献
[1] http://app.famitsu.com/20131002_235629/
[2] http://app-review.jp/news/173594